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宮本泰夫氏が語る戦略的デバイス「HAJIME」の真価

  • 6 日前
  • 読了時間: 8分
特別インタビュー

株式会社バリューマシーンインターナショナル(VMI社)の取締役副社長、宮本泰夫氏。デジタル印刷の可能性を多角的に発信する同氏が、自ら企画・配信を手掛けるVMIウェビナーシリーズ「最新デジタル印刷技術を知ろう」は、これまでに第6回までが開催され、大きな反響を呼んでいます。


第5回では、デジタル印刷が生産機として確立した先のステップとして、宮本氏は後加工や周辺技術による「高付加価値化」の重要性を説いています。今回は、その一環として紹介されたレーザー加工機の代表的な選択肢「HAJIME」に焦点を当てます。

膨大な機材データを持つ宮本氏が、なぜこのデバイスを戦略的な選択肢としてピックアップしたのか、その真意を伺いました。




目次


1.戦略的デバイス:HAJIME(はじめ)とは

インタビューの本題に入る前に、今回焦点を当てる「HAJIME」についてご紹介します。 「HAJIME」は、高い安全性と操作性を兼ね備えた卓上サイズのレーザー加工機です。放射安全基準の最高位「クラス1」に準拠し、オフィス環境でも安心して導入可能です。40Wの高出力レーザーにより、紙の精密なカットはもちろん、厚さ10mmのアクリル切断や木材への彫刻など、印刷会社の既存技術を異素材へ応用し、新たな商品開発を可能にするデバイスです。


レーザー加工機HAJIME
40W CO2レーザー搭載。
安全基準クラス1に準拠した安全で使いやすい
卓上型レーザー加工機「HAJIME CL1 PLUS」



2.デジタル印刷を「ビジネス」に変える視点

第1回から「最新技術を知ろう」という一貫したテーマで講義をされていますが、トレンドから運用、そして第5回の「高付加価値化」へとステップを進めてこられた、宮本様の狙いをお聞かせください。


宮本氏 : 印刷市場を取り巻く環境は、ここ30年で急速に変化しました。

インターネットやITの普及、さらには印刷物の小ロット・多品種化により、市場規模は半分以下に縮小しています。 従来からの印刷技術は成熟化し、主に商業印刷物を手掛ける印刷会社の営業利益率は3%前後まで落ち込んでいます。こうした状況下では、「複製」する技術としての印刷から脱却し、ビジネスそのものを転換していくことが求められ、小ロット・多品種化というニーズに応える手段として、デジタル印刷技術が登場して30年になります。しかし、国内での利用率は市場全体の4~5%程度。欧米の15%強という実績と比較して大幅に遅れています。 この背景には、日本独特の文化や国民性も関連していると考えています。


こうした変化に対応するためには、まずは製造業として、どのような新たな技術が市場にあり、何ができるようになっているかを、製造側とマーケット(顧客)側の双方が知ることが重要です。 デジタル印刷の利用は小ロット化への一つの解ですが、その先には印刷産業が社会に何をもたらすのか、つまり新たな提供価値を創造していくことが求められます。この「印刷ビジネスの高付加価値化」こそが、本シリーズの最終的なゴールなのです。





3.「高付加価値化」の鍵を握る、後加工の重要性

「高付加価値化」の中でも、特に「後加工」の役割が重要視されるようになったのはなぜでしょうか。

インタビューに答える宮本氏

宮本氏 : 印刷物を一つの「製品」として捉えたとき、製造には企画・デザインから加工・フルフィルメントまで数多くの工程があります。 米国では単なる印刷のことを「Ink on Paper(紙の上のインク)」と呼びますが、製品の価値は単に紙にインクをのせるだけで生まれるものではありません。付加価値の高い印刷物とは何かを考えたとき、最も重要なのは「その印刷物が実現する効果」であり、それはサプライチェーン全体が創り出すものとなります。


製造業としての印刷会社にとって、印刷しただけでは製品にはなりません。どのような印刷物も、印刷後に「加工」というプロセスを経て初めて製品として完成します。 特に加工は、最終的にその製品を手に取る利用者が直接触れる機能を担うため、効果を高める上での役割が非常に大きいのです。 同じ印刷プロセスを経たとしても、加工のバリエーション次第で異なる質感に仕上げることが可能であり、製造における核心的なプロセスと言えます。


また、デジタル印刷の普及に伴い、印刷の小ロット化は進みましたが、加工プロセスの小ロット化が遅れていたことが大きな課題でした。 近年、小型の加工システムが増加し、加工まで含めた小ロット製造が本格的に可能になったことは、非常に注目すべき進展です。



4.インラインとオフラインの使い分け

ウェビナーでは「インライン加工(内蔵機)」と「オフライン加工(別置機)」の使い分けについても触れられていました。効率化が進む中で、あえて「オフライン」を併用する意義について教えてください。


インタビューに答える宮本氏

宮本氏 : 製造プロセスの効率化という観点では、どちらが適しているかは常に議論の対象です。 一般的に、資材や体裁が一定の「定型製品」であればインライン型が効率的ですが、非定型の業務がランダムに発生するプロセスにおいては、オフライン型が向いています。


日本の印刷市場を見ると、小規模企業が多く、多様な仕様を持つ商業印刷系の会社が非常に多いのが特徴です。そのため、加工プロセスをオフライン型にして業務に応じて柔軟に切り替えることが、業務の幅を広げ、全体的な効率を高めることにつながると考えられます。 一方で、インライン型は出版やパッケージ、ラベル市場などで大きな効果を上げており、それぞれに明確なメリットが存在します。



5.なぜ、「HAJIME」なのか

多くの選択肢がある中で、レーザー加工機として「HAJIME」をピックアップされました。「選定の決め手」となったポイントは何でしょうか。


宮本氏 : 従来の印刷における加工には、紙加工や製本、加飾など様々な種類があります。その中でレーザー加工技術は、「抜き」と「加飾」の両方で利用でき、さらに多様なメディア(基材)への加工が可能です。 これは印刷ビジネスにおける新たな製品開発や付加価値創造に直結します。

商用レーザー加工機には、高速搬送を得意とする紙加工中心のシステムと、幅広いメディアへのエングレービング(彫刻)などに軸足を置いたシステムがありますが、私は特に後者の「新たな商品開発」という側面に注目しています。 「HAJIME」は、まさにこの位置付けにあるシステムです。

また、国内の印刷会社の多くは中小企業であり、システム投資を抑えつつ効果を最大化することが求められています。 「HAJIME」はその可用性や性能から見て、投資に対する利用メリットが他の競合システムと比較して極めて高いと判断しました。



「HAJIME」の導入によって、印刷会社の提案スタイルはどう変わると期待されていますか。


 宮本氏 :「HAJIME」は紙以外のメディアを利用した製品開発を可能にします。印刷業界が長年培ってきたプリプレス技術を、アクリルや木材などの異素材にも応用できる。さらに紙メディアと組み合わせた新しいビジネスを企画することも可能です。 これらは、クライアントに対する強力な「新たな提案のきっかけ」になると確信しています。


HAJIMEの加工可能素材

HAJIMEの加工可能素材




6.技術を「人」の力に変えるために

講義では「人材教育」の重要性も強調されています。「HAJIME」のようなクリエイティブな機材は、現場の若手や次世代リーダーにどのような影響を与えるのでしょうか。


宮本氏 : 機材としての「HAJIME」がクリエイティブなのではありません。それを利用する人や組織が生み出すクリエイティブな発想を、「HAJIME」が形にするという役割なのです。

単に導入すれば変化が起きるわけではありません。あらゆるシステムはモノづくりのための「道具」であり、それを「何のために、どう利用するか」が最も重要です。 そのため、導入にあたっては目的と利用方法、そして何を実現したいかという「ゴールイメージ」を明確にすることが求められます。

このように、ビジネス面での創造性を高めるためのツールとして「HAJIME」を活用し、人が「誰に、どういった価値を提供できるか」を考えていくプロセスそのものが重要です。 こうした経営的な視点を現場に与えることこそが、「HAJIME」がもたらす本当の価値であり、人材育成という大きな成果につながるのだと考えています。


レーザー加工機HAJIME


7.株式会社バリューマシーンインターナショナルについて

今回お話を伺った宮本氏が所属する株式会社バリューマシーンインターナショナルは、印刷市場に特化した独立系のコンサルティング企業です。


主に印刷会社、関連機器メーカー、業界団体に対し、ビジネスアドバイザリーや研修プログラム、講演などを幅広く展開しています。営業・マーケティングから技術面までカバーし、企業の強みを生み出す実務コンサルティングを通じて、新事業の創出や人材育成を目指したサービスを提供しています。


HAJIMEの加工可能素材

宮本泰夫

取締役 副社長


1993年より東洋インキにてデジタル印刷機の技術、アプリケーション開発に携わる。
2003年にバリューマシーンを設立し現職。独立系コンサルタントとして、デジタル印刷を中心とした、基礎技術から、デジタルワークフローやWeb-to-Printなどビジネス技術面でのコンサルティング、企画・セールス・マーケティング面でのビジネス開発コンサルティングを多数手掛ける。情報工学修士

クロスメディアソリューション研究会 運営理事
全日本印刷工業組合連合会 印刷営業講座 専任講師
日本印刷技術協会(JAGAT) 客員研究員
日本プリンティングアカデミー(JPA) 専任講師
日本グラフィックサービス懇話会 顧問




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執筆者紹介

郷戸 すみ恵(Goudo Sumie)

デジタル印刷機メーカーとの用紙検証や共同展示会のアテンドなどを数多く経験し、社内でもデジタル印刷および用紙に関する専門知識を有するメンバーの一人である。本格的なWebマーケティングやプロモーション活動は初めてであるが、やる気とアイデアでチャレンジ中。最近はキックボクシングで汗を流し、ストレスを発散している。

 
 
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